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    2006.06.26 Mon フミヤのこと

    昔うちの子どもらが通っていた習い事に
    フミヤという中学生の男の子が居ました。
    ほそっこくて明るくて優しくて
    当時まだ小さかったうちの息子が稽古の最中に寝てしまったりすると
    「はぎっち(私はそう呼ばれてました)は道具持ってよ 俺が息子運んでやるから」と
    まだ出来上がってない中学生の華奢な体で
    20kgの息子を抱えて車まで運んでくれたりしました。
    家が割と近所だったので送って帰ったりするうちに
    フミヤの家庭の事情をぽつりぽつりと訊く事が多くなりました。
    兄弟がたくさんいること。
    狭いアパートにひしめくように住んでること。
    ご両親はまだ若く滅多におうちに居ないこと。

    なにかあったらいつでも電話しなよと携帯の番号を渡しておきました。
    ほどなく平日の昼間に電話が来ました。
    風邪を引いて学校を休んでるけど
    食べるものが何も無いと。
    コンビニで食料と飲み物を買って自宅まで持って行くと
    一昨日から何も食べてないとのこと。
    親御さんは一体どうしてるのかと尋ねたら
    仕事でずっと帰ってきてないそう。

    それからしばらく
    フミヤが習い事に来ない日々が続きました。
    噂によると家にも戻ってないそうで
    でも特に誰も探してはいないようでした。

    その話を耳にした翌日
    フミヤから電話がありました。
    親父と折り合いが悪くなって家出をしてるけど
    もう居場所がなくなってしまったと。

    とりあえずウチにおいでと呼びつけると
    華奢な体が更に細くなっていて
    学校のスポーツバッグに手近な着替えやタオルだけ詰め込んで
    友達の家を泊まり歩いていたと笑いながら言いました。
    洗濯物がたまっているだろうからうちの分と一緒に洗濯をしてやるよと
    タオルを干していると
    フミヤの苗字と違う名前で
    「●●フミヤ」と記名されたタオルばかり。

    「オレ ちょっと前まで施設に居たからタオルに名前書いてあんの
    んで母ちゃんが再婚したからいま名前が違うんだ
    その施設には実はまだオレの兄弟が残ってるの
    元々オレ7人きょうだいで
    半分だけ母ちゃんに引き取られて今のアパートに住んでるから
    残りの4人がまだ施設にいるまんまなんだ
    今の親父は機嫌が悪いとオレのこと殴ったりするから
    全員は引き取ってこれない
    いつかオレが引き取って全員育ててやんなきゃって思ってる」

    そう言ってフミヤは
    布団が干されて板だけになってる私のベッドで
    すうすうと寝息をたてて寝入ってしまいました。

    ほどなくしてフミヤは家に帰り
    その後はなんとか家に留まり
    高校にも進学したのですが
    その後学校を辞めたそうで
    近所のあちらこちらでバイトをする姿を見かけました。
    時々金髪だったりピアスだったり彼女連れだったり。
    去年会った時には
    いくぶん大きくなった身長で
    笑顔で私に「はぎっちー!ひさしぶりー!」と駆け寄ってきて
    今住み込みで現場の仕事してるんだと
    坊主に毛が生えたような頭をかきながら話していました。

    「はぎっちにはお世話になったから
    いつか焼肉おごったげるからね!」

    気にせんでいいよ。
    私はあんたの境遇に
    自分を重ねてただけだから。
    親が居なくて
    病気のときも独りで
    家に居場所がなくて
    行くあてもなくて
    全部おんなじだったから。

    あのとき自分がしてほしかったこと
    自分が助けてほしかったこと
    誰か 誰でもいいからと
    子供が当たり前に持ってる親 居場所 安住の地を探していた
    だけど助けてくれる人は誰も居なくて
    そんな思いを味わうのは自分だけで充分だったから。

    だから私は
    つらいことがあるたびに
    こんな思いをするのは自分だけだったらいい
    私がこんなにつらいのだから
    他の人だって絶対につらいのだから
    誰もこんな思いしなけりゃいいと願う。

    私が誰かの救いになるのなら
    思う存分使えばいい
    見返りも何も要らない
    私の手に何も残らなくていい
    ただ私と同じ思いで苦しむ人が
    一人でも減ればいい。
    私が知ってる苦しみがこの世の苦しみの全てじゃないから
    全部を分かってはあげられないけれど
    それでも分かる範囲だけでも
    私の手が届くぶんだけでも
    何か今の私にできることがあるなら。

    耐え難い孤独や
    居場所の無い苦しみや
    足元の不安定さゆえの不安や
    そんなものを抱えてる誰かに
    だいじょうぶだよと言いたい。
    私が居るよと。

    私が一番欲しかったものがそれだったから。

    私は一時避難シェルター
    いつまでも私のことを思ってくれなくていい
    あなたはあなたの人生を強く歩んで。
    私はそうやって
    昔の私を抱きしめているだけなのだから。
    誰にも助けてもらえなかった私を
    今度は私が助ける。
    そうすることであの時のかわいそうな私も
    いくばくか救われる。

    痛いことやつらいことは全部私のところに置いてっていいよ。
    そう言ってくれる人が居ない事が一番つらいのよく知ってるからね。
    だから私が言うの。
    置いていきな。
    そして前を向いて歩いていきな。

    自分が守ってもらえなかったこと嘆いてても何も生み出さない。
    なら私は誰かを守るよ。
    ちっさな範囲だけしか手が届かないけれど
    届くだけ手を伸ばすよ。

    そして私が必要なくなるのが一番いいんだ。
    はやく忘れて次のステップに進むといい。
    私はここで見送るから。
    振り返らなくていいから。

    がんばってね。

    Comments

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    comment
    みゃう : URL

    #79D/WHSg Edit  2006.06.26 Mon 07:31

    朝からボロボロ泣いちゃいました(;_;)
    辛い時に辛いと言える安心感、それがあるだけでもかなり違いますよね。
    無償の奉仕、大切な事だと分かっていてもなかなか出来ない事です。
    マミィの行動で未来へのレールをちょっとひいてもらえて元気に歩けるようになった男の子、マミィの優しさが文章が溢れてますね。
    私もマミィと同じ気持ちで手を差し伸べる事が出来るように頑張りたい。
    良い話をありがとう。
    追伸:ムスコくんの具合はどうですか?熱は下がったのかな?ちょと心配(>_<)

    ゆかねーやん。 : URL

    #79D/WHSg Edit  2006.06.26 Mon 22:25

    すまん、なにもできんけど、がんばれ!

    これだけ、言いたかったのです。

    hagiwaramao : URL

    #79D/WHSg Edit  2006.06.26 Mon 23:29

    >みゃう
    いい子なんだよねーフミ。親から見たフミと私から見たフミは違ったんだろう。
    昨年末は「はぎっちー!原チャリ安く譲ってくれるとこないかな?」
    と電話してきたりしてた。かわいいのう。元気でな。
    息子の熱はまだ下がってねっす。今トイレで吐きそうで吐けないと悶絶してます。
    母は見守るよ。クーラーのきいた室内から首だけ出して。<愛は。

    >ゆかねーやん
    かける言葉も無いよなあ。
    身近にいる分にはせいぜいメシを食わせてやるくらいかの。

    自分って無力やなぁと思うわ。
    でもなんもできんならできんなりに気付いたことしていきたい。
    相手が誰であっても。
    そやって生きていけたらそれでいい。
    長生きしてきたもんの努めやろ、これ、と思う。

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